さまようネシャマー

     不完全体

 女が立っていた。
「お金あげるから、私と寝ない?」
「え?本当?」

 女は男をシャワー室に連れ込み、裸にし、手錠をかけ、手錠を壁のフックに吊るした。男は、屠殺され解体された牛のようにぶらさがった。

 女は男を洗った。
 女は呟いていた。

 ――完全体の雄を献げなさい。王が受け入れるように。雄牛を王の前で屠ったら、血を献げなさい。それから皮を剥ぎ、解体し、火を焚き、火の上に薪を並べ、解体された部分を、頭も脂肪も、すべて火の上の薪の上に並べなさい。内臓とすねは、特別に水で洗いなさい。それから焼きつくして煙にしなさい。それは王を喜ばせる宥めの香りなのです……

「こんなところにあざがある」
 女は、水気を拭き取り、ベッドに引いて行き、手錠をベッド枠に括りつけ、両方の足首をストッキングで結び、その端をそれぞれベッドの柱に結んで、開脚状態にした。
「あんたは完全体でない。生け贄にできない。王様のご機嫌を損じるから。結局あんたも卑しい動物。期待していたけど。後は楽しく遊んでいればいいのよ。さあ、私を喜ばせて」
 女の目に黒い炎が燃えた。
「いいわ、いいわ、可愛いダビデちゃん」
 女は男にまたがり、蛇を呑みつくした。体をねじり、男の腹の上で両膝をそろえ、腰をねじり、目を閉じた。
「王子さま」

 女はベッドから離れた。
 二本のナイフとじょうごを持ってきた。ナイフを男の腹部両側すれすれに、マットに突き刺した。
「こぼすと、殺す」
 女はじょうごをくわえさせ、またがると放尿した。尿は男の口に入り、食道を通った。
「美味しかったと言いなさい」
「ああ」
「美味しかったと言いなさい」
「美味しかった」

 女はじょうごを外し、舌で尿を拭き取らせた。
「可愛そうに。あんたは闇をさまよい、こぼれたパン屑を拾って生きていく」

 女は金をはらって、消えた。

 ホテルを出た。雷がとどろき、稲妻が走り、街のシルエットを浮き彫りにして、闇に沈めた。

 水が一滴、男の額に落ちた。涙がにじんだ。
                            AT

  ??∞∞(*_*)∞∞∞∞?????∞∞(*_*)∞∞∞∞???

 http://www.neshama.info/ (ネシャマー王国)
 http://www.geraldschroeder.com/ (シュローダー博士のHP)(英文)

コメント