ノアはそれほど優れた人ではなかった。しかし腐敗を極めたその時代では正しく非の打ち所がないように見えた。「『神』はノアと共に歩んだ」とあるのは、『神』が並んで歩かないと一人で正しく歩めなかったからである。

 ノアは雨が振り出しても半信半疑だった。くるぶしに水が達するとと、はじめて箱舟に入った。まわりの人は溺れていたが助けようとしなかった。『神』の意向だったからである。

 やがて雨が止み、水が減り始め、山々の頂きが現れた。それでノアはカラスを放った。カラスは頭がよく、言葉を理解したからである。しかしカラスはノアを疑っていた。自分の留守中に自分のメスを他の鳥とかけ合わせないかと疑ったのである。それで飛び立つがすぐに戻ってきた。
 
 その後、ノアは鳩を放った。鳩は頭が悪かったが、陸地が乾いていないと戻ってこないだろう。それで分かるだろう、とノアは考えた。鳩はオリ−ブの葉を持ち帰った。「なぜこんな苦い葉を持ち帰ったのだ」と問うと「『神』の苦さは人の手の甘さに勝る」と鳩は答えた。七日してまた鳩を放つと帰ってこなかった。

 陸地が乾いてもノアは『神』が命令するまで箱舟を出なかった。神は義人を試すからである。

 また『神』は洪水以後、肉食を許した。それまでは菜食のみだった。
 
 『神』の許可が出て、ノアは家族と共に箱舟を出た。ライオンに餌をやるのをノアは忘れたので、怒ったライオンがノアを襲い、ノアは性器に負傷した。しかし長い間箱舟内は性交禁止だったので、彼は酔っ払い、妻の天幕に入り、不能であることを露呈して恥を掻いた。これを知った第三子ハムの子カナンが祖父を襲い、肛門性交で犯した上に、去勢した。

 酔いから覚めてノアは言った。
 「カナンは呪われよ。兄弟たちのしもべのしもべとなるように」
 また言った。
 「セムの『神』永遠はたたえられよ。カナンは彼のしもべとなるように。『神』がヤペトのために広げるように。彼はセムの天幕に住むように。カナンは彼らのしもべとなるように」

 ヤペトの子孫は、地中海世界、キリキア、アジア、の人達である。ハム、カナンの子孫は主にリビア、アフリカにかけえての民である。セムの子孫は『神』が契約を結んだ民である。

 ノアの三人の息子、セム、ハム、ヤペトから、ネシャマー遺伝子は世界に広がった。これらのノアの子孫(全人類)に『神』は七つの掟を与えた。

 一。偶像を礼拝してはいけない。
 二。『神』の名を冒涜してはいけない。
 三。自分の社会の法律を守らねばならない。
 四。人の血を流してはいけない。
 五。姦淫・近親相姦を行ってはいけない。
 六。奪ってはいけない。 
 七。生きている動物から切り取った肉を食べてはいけない。

 夕があり、朝があった。また一歩、人間は混沌から秩序へ踏み出した。

 http://www.neshama.info/ (ネシャマー王国)
 http://www.geraldschroeder.com/ (シュローダー博士のHP)(

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